展示のお知らせ:「サウスシー・アバンチュール」

展示のお知らせ:「サウスシー・アバンチュール」


サウスシー・アバンチュール

踏み出した足がどこまで沈むか分からない泥底の川を、ゆっくりと進む。マングローブの木漏れ日が揺れる濁った水面にそっとルアーを浮かべると、がぶりと水音がして竿先に重みが伝わる。

潮が引いた頃合いを見て、人けのない未明の港へ行く。ぬるぬると滑る船揚場のスロープを水際までにじり歩き、懐中電灯の光を向けると、目当ての魚がぼんやりと浮かんでいるのが見える。

どこからか空気が漏れ始めたゴムボートに焦りながら、釣り上げた大物の写真を撮る。背景に写る海面の鮮やかな群青色に、自分が思いのほか沖合まで出ていることを教えられて脂汗がにじむ。

離島の夜、民宿を出て夜の港へ向かう。橙色の常夜灯の下で手の中の魚を眺める。初めて見た気がする。入念に写真を撮って、緑灰色の海に還す。疲れきって飽きるまで、ただそれを繰り返す。

潮だまりの岩陰から引きずり出した魚体は、思い浮かべていたよりずっと大きく、美しかった。気が抜けて座り込む。魚は器に横たわって大息を吐いている。強い陽射しと、耳に迫るセミの声。


作品展のお知らせです。

🗓 2023年8月5日(土)〜16日(水) ※7日(月)14日(月)は休廊
🏛 ギャラリー・マルヒ(東京・根津)map
⏰ 12:00〜19:00

先日、尼崎市総合文化センターで開催されていた「魚へのまなざし −長嶋祐成と大野麥風−」展に新作として出品されていた南の海の魚たちの絵(一部、今回の作品展に出品しないものがあります)に、新たな描きおろしを加えて展示販売いたします。

販売に関しましては「先着順、おひとり様3点まで」、また混雑緩和のため同時入場人数は最大6名様までとさせていただくことになりました。ご理解賜れましたら幸いです。

暑いさなか、また皆さまご多忙なお盆の時期で大変恐縮ですが、ぜひお運びくださいますようお願い申し上げます。

(おわり)