車にしめ飾りを付ける

車にしめ飾りを付ける


車にしめ飾りを付けている。
今年はこの自分の以外にしめ飾りを付けた車を一台も見ていない。去年も見なかった気がする。

バブル全盛の子どもの頃、正月になると街を行き交う車にしめ飾りが付くのが嬉しかった。半数以上が付けていたのではないかと思う。
そしてしめ飾りが似合うということにかけては、父の愛車のクラウンはダントツだった。分厚く丸みを帯びた穏やかな顔立ちが、藁色のしめ縄と前垂れに真っ白な紙垂(しで)、中央に鎮座した橙で華やかに彩られ、見るたびに心が躍った。

ところがバブルが弾けて世の景気が悪くなると、しめ飾りを付けた車は年々はっきりと減っていった。そしてついには父の車にも付かなくなった。
いつか車を持ったら当たり前のように毎年しめ飾りを付けたいと思っていたけれど、車どころか免許すらも持たないまま歳を重ね、ようやく実現したのは2023年の正月のことだった。

父のクラウンに付いていたのと同じ、しめ縄と紙垂と橙のしめ飾り。
2023年、いかにも石垣島の冬らしい空模様の下で。

その後2年間、車は石垣島、自身は東京と離ればなれで正月を迎えたので、車を東京に運んできた今年が2度目のしめ飾り。スーパーへ買いに行くと、思いがけず橙のついたものが一つも売られていない。子どもの頃から見慣れた橙つきのしめ飾りは主に関西のものなのだと初めて知った。

橙なしのものを買ってみたけれど、どうもしっくり来ない。首を傾げていると妻が橙だけ売られているのを見つけて買ってきてくれた。これをクリスマス前にFlying Tigerで買った赤い紐でぐるぐると縛りつけ、車に据えつける。関西式のとは少し違うけれど、これはこれで満足のゆくものになった。

さてこれで1月15日までしめ飾り付きの車を楽しく乗り回そうと思っていたら、その日付も関西での慣わしとのこと。関東や東北、九州では1月7日に片づけるそうで、確かにご近所の玄関飾りはもうなくなっている。郷に入っては郷に従うのが本筋とは知りつつ、せっかく橙の後付けまでして気に入っているので、周囲の目を気にしつつ15日まで付けておこうと思っている。