西野嘉憲さん写真展「海人三郎」のお知らせ
自然は無表情だと、常々思っている。
どれだけ思いを寄せようとも、自然は人間に寄り添わない。また逆にどれだけ傷つけようとも、自然は淡々と姿を変えたり変えなかったりするだけで、人間を完全に包摂しながら常にただそこにある。
そんな自然のありさまに、大きな畏怖と安息を覚える。
「自らの全責任において」という条件のもと、人間はこの茫漠たる無表情に抱かれて自由に生きることを許されているのだ。
石垣島を拠点に活動される写真家・西野嘉憲さんが捉える人々の姿は、そんな人間と自然との関係を極めて高い純度で描き出しているように思える。
奄美のハブ捕り名人。八重山の海人。房総の捕鯨漁師。西野さんが追い続けるのは、自らを包摂する自然の中へ飛び込み、その身をもって命のやりとりをする人たちだ。かれらは力強く生を燃やし、自然を愛し、そしてその無表情を知るがゆえに畏敬と祈りを忘れることがない。
西野さんの写真は美しく、情緒豊かで、また人類学的な価値を有するものでもある。けれどもそれをも上回る何かに−僕なりの表現で言えば、自然の無表情の下で生を燃やすという命の本質に−生々しく心を打たれるのは、西野さんご自身が被写体となる人々と共に行動し、そこに没入しているからだ。
たとえば海人も捕鯨漁師も、危険と隣り合わせの世界で現代社会のまなざしの外にある命のやりとりをしているからこそ、本来は取材者を寄せ付けようはずもない。かれらと人間的な信頼を築き、同じ世界に身を置きながら生き様を追う西野さんの写真は、他の誰にも描くことのできないドキュメンタリーである。
今回の写真展は、西野さんが特に深くお付き合いしてこられた石垣島の伝説的漁師「海人三郎」さんがメインテーマ。写真集『海人 −八重山の海を歩く』刊行記念でもあります。
東京での会期はすでに終了してしまっていますが、本日9/5(木)~11(水)まで、キヤノンギャラリー大阪にて開催中。
また写真集はオンラインでも購入でき、西野さんの公式サイトからだと特典がつきます。
ぜひご覧ください。
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●場所:キヤノンギャラリー大阪 [MAP]
※地下鉄四ツ橋線「肥後橋」・京阪中之島線「渡辺橋」直結
※その他、地下鉄御堂筋線「淀屋橋」、JR東西線「北新地」など
●会期:2019年9月5日(木)~11日(水)
※日曜休館、ご注意ください。
●時間:10時~18時(最終日は15時まで)
●ギャラリートーク:9/7(土)16時から。入場無料、先着順です。