ワークショップ「海の生き物を描く」@鳥羽市立 海の博物館

ワークショップ「海の生き物を描く」@鳥羽市立 海の博物館


2018年9月30日までの会期で「三重・暮らしのさかな〜海民が愛した姿をたどる」展を開催中の鳥羽市立 海の博物館にて、去る8月24日、ワークショップ「海の生き物を描く」を実施しました。
当日は年齢問わず16名の方々(+保護者の方)にご参加いただき、僕自身とても楽しい時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。

内容はタイトルそのままに、博物館の裏の浜で採れた生き物たちを描くというもの。
画題となる生き物たちは、前日までにスタッフの方が水槽にストックしておいてくださったものに加え、当日朝に僕も網を教わって捕まえました。

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ゴンズイ、クサフグ、ヨウジウオ、アイゴ、ギマ、アオリイカなどなど…
ほんの2回ほど短く網を曳いただけで多彩な顔ぶれ!藻場が命の揺りかごであるということを、改めて実感します。

皆さんと自己紹介して、ワークショップ開始。
目の前の水槽には魚やエビたちが泳いでいるし、早く描きたい!という気持ちをいったんおさえてもらって、最初に「絵を描くこと」について少しお話をしました。

僕にとって絵を描くということは、自分の心の(頭の)中に生まれた何かに、線や色で形を与えていくこと。「絵を教わる」というとついつい、目の前にあるものをいかに巧みに紙の上に表現するかという技術的なことに気を取られるものですが、今回僕がお伝えしたかったのは、まず「自分の心の中に生まれた何かを自分でつかむこと」。そしてそれを「うまいかへたかなんてことにとらわれず、おそれず、ただ自分の心の中に生まれた何かに形を与えることだけに集中して描いてみること」でした。

そこで最初に手慣らしとして取り組んだのは、「自分の『怒り』の気持ちを線で表現してみる」ことと、次に「その『怒り』が溶けてきたころの気持ちを同じく線で表現してみる」ことでした。
なぜ生き物を描きに来てこんな落書きをしているのか、短い時間の中では少しわかりにくかったかもしれません。けれど、皆さんがギザギザや円い波線で自分の心の中を探り探り形にしてゆく姿は、絵を描くということの原点を目にするようでした。

ある参加者の方の心のかたち

ある参加者の方の心のかたち

手慣らしが終わったらいよいよ生き物を描く番です。
まずは何より、心の中に生まれる「あれが好きだ」を見つけること。水槽の生き物たちを眺め、気に入ったものがあればビンや器にすくって間近に見つめます。そして本番の画用紙に描く前に、コピー用紙にスケッチ。

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絵の技術的なことはほとんどお話しなかったのですが、ひとつおすすめしたのは「一筆書きのように、一本の線で描いてみること」。これには理由があります。

絵を描くというと、まずは全体像を頭に思い浮かべて、それに従って細部を描いていくのが自然な手順だと思います。しかし、予定調和を目指して描かれる線というものは往往にして、絵をイキイキとさせる緊張感を失ってしまうものなのです。
たとえば一本の木を思い浮かべるに、木はあらかじめ「こういう樹形になろう」と予定されてそのように育っていくのではありません。1ミリ1ミリ成長してゆく中で、その日の天候や気温、土の状態、虫や獣にかじられたり、人間の活動の影響を受けたりして、その瞬間その瞬間を生きてきた、その結果が今ある樹形なわけです。僕は自然物の美しさというのは、どの一点を取り出しても、どこを微分しても、予定調和の意図が匂わないところにあると思っています。その美しさに近づくためには、それを絵としてとらえる側にも、一瞬一瞬にすべてをかける緊張感が必要だと思うのです。
だから全体像を頭に浮かべてそれにおそるおそる近づいていくのではなく、かりに最終的に線が閉じなくてもいい、紙からはみ出してしまってもいいから、次の瞬間鉛筆をどう動かすかというところに心を集中させる一本線を、僕はおすすめしたのでした。

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コピー用紙へのスケッチを終えて、よしこれで!と決心がついたら本番です。水彩紙をパネルに水張りしたものにお気に入りの一匹を、あるいはたくさんを、描いていただきました。

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最後は皆さんに一言ずつ、「どこが好きなポイントか」を挙げながら絵を見せていただきました。どんなところが好きだと感じたのか、それをどんな風に描きとめたのかは本当に人それぞれで、すべての唯一無二の感覚に「へえ〜!」とため息をつく思いでした。

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僕は絵の技法を体系的に学んでいないので、誰かにお伝えできるほど自分の技術が整理されているわけではありません。けれども、そもそも「絵を描く」とはどういうことなのか、それを一緒に考えることで、皆さんそれぞれがお家に帰られた後に「またちょっと絵描いてみようかな」と思うような、そういうきっかけを生み出せたらと思っています。

楽しい一日でした。