住む土地に根差すまで
石垣島でも7月9日から新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり、私も初日早々の枠で射ってもらってきました。
接種は9時スタートの予定でしたが、受付を待つ長い列が動き始めたのは9時15分過ぎ。仕組みを作って人員を配置し、フローを周知して実際に動かすまでの大変さが窺えたような気がしました。頭が下がります。
注射は「あれ、今のが針だった?」と思うほどかすかなチクリで終了しました。
珍しく早い時間から街に出たのが気分良く、港に寄ってシェイクを買いました。竹富島に渡る人たちが定期船に乗り込んでいます。人が行き交う場が醸す感情や物語の余韻に触れた気がして、同じ理由で「駅が好き」と言っていた高校時代の友人の早熟な感性を思い出しました。
その後、書類の手続きで市役所へ。ワクチン接種開始と、石垣島出身の西武ライオンズ平良海馬投手の39試合連続無失点記録を祝う垂れ幕がかかっていました。これに嬉しい気持ちになったことに、自分にも本当に少しずつですがこの地への帰属心が育っているように思いました。
土地に根差すには住んで10年かかる、というのが持論です。
学生時代に住んだ京都は大好きでしたが、自分の居場所だと感じることはないままでした。その後東京(圏)に移り、10年経ったあたりで東京の人間になったなと思うようになりました。自らの行動範囲に記憶や実感が行き渡り、人間関係も厚みを伴って成熟します。
各地の移住者の知人たちを思い浮かべても、10年選手には落ち着きと土地への理解がしっかりと備わっているように感じます。
もっと早くその段階に達する方もたくさんいるとは思うのですが、私自身は10年が一つの節目だと思っています。
石垣暮らしも6年めに入りました。
個展の開催や仕事の関係は依然ほとんどが東京だし、島の中でなんらかのコミュニティに属すこともなく限られた人間関係の中で暮らしています。「この地に根差しつつある」とはとても言えませんが、昨年あたりからもっと文化や歴史を知りたいと思うようになりました。移住まもなくの頃は義務感から本を開く程度でしたが、今は自然とそういう気持ちが湧きます。
遅れ馳せで恥ずかしい限りですが、ようやく根を伸ばす準備ぐらいは整いつつあるのかもしれません。
文化や歴史に触れるのも、海や魚を手掛かりとするのが私にはもっとも心地好いです。自分の行動や感性に常に新たな切り口を設けて、何かを掴んだと感じられる毎日にしていきたいと思います。