個展「Days In a Tank」展、ありがとうございました
「Days In a Tank」展、2018年10月20日〜28日の会期を無事に終了いたしました。
ご来場くださった皆様、SNS等で言及・情報をご覧くださった皆様、会場の「ギャラリー201」様、本当にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。
たくさんの方が早々にお気づきくださった通り、今回の作品は9月末で閉館した都内のとある水族館の魚たち、それも明確に「これ」と特定できる個体をモデルとして描きました。
これまで、主に海で出会った魚たちの「種」としての様相を描いてきた私にとっては初めての試みでした。しかし振り返ってみればそれは、6月に開催した個展「魚の肖像Ⅲ 個と水平に向き合う」において、「自然」や「海」といった総体ではなく目の前のこの魚に向き合うんだ、という感覚を捉えようとした延長上にあるもので、私にとってはスムーズに辿り着くべき地点だったのだと改めて実感しています。
「種」としてのらしさを描くことと「個」のらしさを描くこととは単に違うことであって、そこには優劣も意義の大小もないわけですが、「個」を描くにあたってはこれまでと少し異なる覚悟が必要だったように思います。人間である私が生まれてから経験してきたのと同種のストーリーを個々の魚が持っていて、そこにアンテナを伸ばし、感じて、描く。そのプロセスにおいて、私はできるかぎりかれらのストーリーの「原典」に忠実であろうとするのだけれど、描かれるものは実際のところすべてが私の解釈を介したものに置き換わってしまう。それを私は「Days In a Tank」−すなわち、かれらが水槽の中で過ごしてきた時間であると語り、のみならず、それはかれらを愛してきた飼育員の方々をはじめとする多くの人々の思いにも言及するものになる。
すべての命あるものが抱える(尻っぽのように後ろに引きずる?)ストーリーは本来、その命のものでしかなく、その命にしか分からない。であれば、それを語る類の芸術は、小説であれ、音楽であれ、絵画であれ、踊りであれ、解釈の介在がともすれば暴力に反転することに常に細心の注意を払いつつ、謙虚に、敬意をもって振舞わねばならない。そのプレッシャーを感じながら描き、そして常に試される気持ちで在廊して皆様にお目にかかったのが今回の個展でした。
「よかったよ」の声は届きやすく、「だめだよ」の声は届きにくい。皆様がどのようにお感じになったのか、「だめだよ」も含め、お聞かせいただけると幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。