ワークショップ「巨大なマグロを描いちゃうよ!」@絵と言葉のライブラリー ミッカ

ワークショップ「巨大なマグロを描いちゃうよ!」@絵と言葉のライブラリー ミッカ


東京・葛飾区は亀有の「絵と言葉のライブラリー ミッカ」さんにて、去る2018年11月10日、ワークショップ「巨大なマグロを描いちゃうよ!」を実施しました。

ミッカさんはひとことで言えば「子どものための図書館」なのですが、子どもだからと目線を下げず大人もワクワクするような選書だったり、落語家さんの寄席や芸人さんの演し物が毎週開かれたり、「あれするな、これやるな」の禁止事項が館内になかったり、とにかく「本当に面白い大人」たちが本気を出した感のある施設です。くわしくはぜひこちらを

そんなミッカさんでワークショップを開かせていただくことになりました。「何か、みんなで大きなひとつの絵を描くということをやってみたい」−その僕の希望を、スタッフの方々が「じゃあ何か本当にいる大きさの魚にしましょう、スペースいっぱい使って4メートルで!」と形にしてくださり、それではと大きなマグロを描くことにしました。

7月に刊行された絵本『きりみ』要素もうっすらと取り入れ、パーツに分かれた大きなマグロをみんなで塗ろうという算段。というわけで事前準備として設計図に基づきそのマグロを作ったわけですが、全長4.1メートル、大きい!ネットには「4.5メートルオーバーのタイセイヨウクロマグロの記録がある」とあったけれど、本当なのか疑わしくなってくるほどの大きさです。

図面をもとに

図面をもとに

製図して

製図して

カットして

カットして

整理して

整理して

マグロの形に!大きい

マグロの形に!大きい

さて当日。参加者の皆さん(子どもたち+保護者の方々)がくじ引きでそれぞれパーツを手にし、パレットに希望の絵の具をもらって塗っていきます。今回はたまたま全員が未就学の年齢だったこともあり、気持ちと手の赴くままという感じ。「白いところを残さないように塗ってね」ということだけお願いしてあったのですが、皆それぞれ手元のパーツから白い部分が消えてゆくにつれ、思いがけない色面がそこに生まれてくるようでした。いや、「思いがけない」というのはかれらの心の中にアンテナを届かせることができない僕の見方に過ぎないのかもしれない。子どもたちは皆、好きな色の絵の具を選び、使いたい太さの筆を選んで、はっきりとした意志のもとに描いているのです。

塗り途中の写真を撮ってなくていきなり完成

塗り途中の写真を撮ってなくていきなり完成

塗り終えたパーツをマグロの形に組み上げると、これがなんとも見事に調和して美しい。そこでふと気がつきました。その瞬間瞬間の選択の積み重ねが、結果として意図なき、予定調和なき姿になる。そんな、自然物があまねく持っている美しさの根源であると僕が思っているところのもの、僕がなんとかしてそれを捉えたくて絵と向き合っているところのものを、これは体現するひとつの方法ではないか。

普段はひとりで絵を描いている僕にとって、これは新鮮な発見でした。個々の選択が個を保ったまま、予定調和なきものとして織りなした総体の美しさ−「予定調和のなさ」はもちろん純粋な自然物とは異なり程度の多寡を含みますが、これこそ、人が力を合わせて何かを作ることの、ひとつの素晴らしさなのだと思い知った気がしました。

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そしてそれに付随してもうひとつ。正直なところ、子どもたちが塗る姿を見て僕は「さすが未就学児!自由さが素晴らしい、見ていて心地好い」と思っていたのですが、完成したマグロの美しさの理由までもをそこに求めようとするのは、「子どもには弾けるように自由であってほしい」という僕の勝手な願いの投影にすぎないのではないかと。

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もちろん、完成した絵の素晴らしさが子どもたちののびのびした色づかい、筆づかいの賜物であることは確かなのですが、ではより規律正しさを身につけた小学生なら?中学生なら?大人なら?素晴らしいものにならなかったかというと、決してそうではないはず。つまり僕が「さすが自由な子ども」というような先入的な願望を持つことは、人が織りなした何かの美しさをつかみ損ねることにもつながりかねない。そんな自分自身の危うさにも気づかされたのでした。

一緒に塗りこまれたくじ引きの紙と、それを指す解説少年

一緒に塗りこまれたくじ引きの紙と、それを指す解説少年

……というような「気づき」はとりあえず傍へ置いたとしても、個のあり方と好奇心が尊重されるミッカさんという空間で、自分が大人であるか子どもであるかということも意識せずに一緒に絵を描くのは、心から楽しい経験でした。またこんなことができれば、と思っています。

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