「世界野生生物の日」に寄せて
国連開発計画(UNDP)さまにお声がけいただき、世界野生生物の日(World Wildlife Day)のソーシャルメディア向けゲストイラストレーターとして作品を寄稿させていただきました。
世界野生生物の日は毎年3月3日。1973年の同日にワシントン条約が採択されたことを記念して、2013年の国連総会で決定された国際デーです。
2019年のテーマが「Life below water : for people and planet」ということで、魚の絵描きとしてお声がかかったのでした。
何を描くかは僕が自由に決めてよいということで、悩みました。
王道でいくならばサンゴ礁の美しい景色、というようなところだと思うのですが、こういう時こそ普段の着眼点を貫くべき、ということでカタクチイワシを画題に選びました。
カタクチイワシは、日本でそれを(抽出物を含め)口にしたことのない人はまれだというぐらいメジャーな魚です。
しかし実は、日本だけでなく世界中で、人々はカタクチイワシを食べています。
日本のカタクチイワシと同じカタクチイワシ属(genus Engraulis)の魚は、異説ありますが世界に9種が広く分布しています。いずれもよく似た姿形で、外見だけでパッと見分けることは難しそうです。そしてそのいずれもが、水産上重要な種として位置付けられています。
はるか遠い地球の裏側で、見も知らぬ異国の人びとの食卓に、僕がこうして食べているカタクチイワシと同じ見た目の魚が載っている。
世界はなんて広いんだと目がくらむのと同時に、しかし世界は確実に一つなのだと思い知らされる。そんな魚が、カタクチイワシだと思うのです。
その中でも、南米に生息するアンチョベータ(ペルーカタクチイワシ )は、天然魚ではダントツ世界最大の漁獲量です。
それを踏まえてイラストを構成したところ、UNDPから「Anchoveta is the 2nd most commercially fished species in the world.」と修正が入りました。調べてみると、過去は2位に大差をつけて世界一の漁獲量を続けていたアンチョベータが、ここ数年は急激に漁獲量を減らし、2016年にはついにスケトウダラに一番の座を取って代わられていたのでした。
漁獲量の減少がすなわち資源の枯渇だと言い切ることはできないかもしれませんが、この事実に関してはそのように理解して問題ないでしょう。
「世界は広いと同時に小さく、一つである」ことを教えてくれるカタクチイワシ は、漁業の持続可能性についても僕たちに多くを教えてくれる存在なのです。
3月3日の世界野生生物の日の後も、2019年の海洋環境に関する国際デーのいくつかで、同じようにゲストイラストレーターとして活動に参加させていただくことになっています。
これを機にますます自らの行動を省みつつ、新しい気づき、学びを表現していきたいと思っています。