おすすめの本とハンカチ「ホンカチクラブ」


ホンカチクラブ

uonofuハンカチをリリースしてくださっているハンカチ専門店「H Tokyo」さんの企画「ホンカチクラブ」に参加しました。

毎年4月23日は「サン・ジョルディの日」。
スペインはカタルーニャ地方に古くから伝わる祝祭日で、この日女性にはバラを、男性には本を贈るという素敵な風習があるそうです。

H Tokyoさんではこの伝統にちなみ、おすすめの本とハンカチを紹介する「ホンカチクラブ」を実施しています。今年のセレクトに私も参加させていただき、4/23〜5/8までH Tokyoさんの各店舗にてご覧いただけました。
「ました」…そう、告知のタイミングを逃してしまい、もう終わってしまっているのですが、せっかくなのでここで私のセレクトをご紹介します。

H Tokyoさんのオンラインショップや店頭にはハンカチがあるので、ぜひご覧になってみてください。

▼1冊目
本:『青が散る』宮本輝/文春文庫
ハンカチ:1105Wガーゼドットハンカチ イエロー
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僕が初めて小説家の凄みを思い知らされたのは、この宮本輝によってでした。作家の頭の中の光景や感情を、言葉の力だけで誰かの頭の中に再現するという困難。それに向き合う宮本輝の言葉は、ほんのかすかな機微に触れても震える薄いガラスのような繊細さと、人間のどんな内面を見てもそれを呑み込む図太さとを併せ持って、その緊張感が1行たりとも許さず行間に満ちています。中でもこの『青が散る』は、「青春」としか言いようのない希望と甘さと、その裏にぽっかり広がっている絶望や不安の暗がりを描ききって、本を濡らしたくなければハンカチ必携。カラリとした明るさの中に、どこかノスタルジックな寂しさを包んだイエローのハンカチがぴったりです。

▼2冊目
本:『竜馬がゆく』司馬遼太郎/文春文庫
ハンカチ:uonofu カタクチイワシ群泳
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子どもの頃からマイペースで、いつも基準は自分自身。だからこそ常に自尊心に満ち、他者への愛に溢れ、自分のやりたい方法で世に貢献することに熱中して人生を使い切ったーー司馬遼太郎の描く坂本竜馬は僕の憧れの人物像ですが、マイペースが度を過ぎてどこか滑稽で愛嬌のある竜馬さんは大のお洒落好きとしても描かれています。もし竜馬さんがH Tokyoの店内に足を踏み入れたら、同志や故郷の人々に贈るんだと目を輝かせて買い漁ったに違いありません。そんな竜馬さんに一枚持たせるなら、ぜひ僕の絵が入ったものを。海風に吹かれていつもよれよれの竜馬さんのポケットに、きちんとアイロンのかかったイワシ柄のハンカチ、という意外性の妙です。

▼3冊目
本:『ムーン・パレス』ポール・オースター(柴田元幸 訳)/新潮文庫
ハンカチ:プリペアドピアノの仔猫ちゃんハンカチ
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思想と哲学とはよく似た言葉ですが、僕の個人的な理解によれば、思想は「こうあるべき」という理想を、哲学は「こうである」という記述を目指すものです。『ムーン・パレス』の主人公は、物語のある一時期、盲目の老人に目の前の光景を逐一言葉で説明するというアルバイトをします。そこで彼が直面するのは、この世界を記述することの果てしない困難。H Tokyoのハンカチをたくさんデザインなさっている有田昌史さんの個展にお邪魔したとき、僕はすぐにこの本を思い出しました。ご自身の世界を捉えて表現することに真摯であり続ける有田さんのハンカチをポケットに忍ばせて、時々「変わった人だなあ」と広げてみる。それは極上の「哲学」な体験です。

 

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