『鶏づくし』展は鶏の魅力そのもので真っ向勝負していた

『鶏づくし』展は鶏の魅力そのもので真っ向勝負していた


東京大学総合研究博物館の『鶏づくし』展を見てきました。

場所は文京区教育センター内の「大学連携事業室」。文京区は東大を始めとする区内の各大学と協定を結んで「学術研究と地域社会の発展のために協力」しているそうで、その一環としての企画展です。
会期延長の恩恵を受けての最終日滑り込みでした。

↓公式ウェブサイトはこんな感じ(スクリーンショット)。

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鶏づくし展のPDF

鶏づくし展のPDF

鶏と人間との関係を辿って、絵あり、書物系の資料あり、各種データを説明するパネルあり、古道具(鶏に餌やる用的な)ありといった感じの展示を想像していたのですが、実際は…

鶏づくし展の全景こうでした。

展示室には中央に大きな台がひとつきり。そこに所狭しと並べられた様々な品種の鶏たちの剥製、それがすべてという真っ向勝負です。

鶏がこんなにかっこいいものだとは知りませんでした。

鶏づくし展の「小国」

「小国(ショウコク)」まさに若冲の絵の通りの素晴らしいバランス。

鶏づくし展の「ポーリッシュ」

「ポーリッシュ」羽毛の冠が顔を覆っています。視界は保たれているのでしょうか。

鶏づくし展の「河内奴」

「河内奴(カワチヤッコ)」この日見た中でも一番のお気に入り。サイズ、体形、毛色のバランスがかっこよかったです。

鶏づくし展の「山伏」

「山伏(ヤンブシ、とルビがありました)」このモード感!

鶏づくし展の「ドンタオ」

「ドンタオ」脚、脚、脚!度肝を抜かれました。恐鳥が蘇ったかのようです。

鶏づくし展の「唐丸」

「唐丸(トウマル)」一際大きくて立派でした。鳴いている瞬間を捉えた剥製の形も秀逸。

こんなにバリエーションがあって、美しい。これは昔から絵のモチーフにされ続けている理由がよく分かります。酉年の年賀状に向けてちょっと鶏の絵を描いてみようかと本気で思いました。

* * *

こうして大興奮で堪能したわけですが、今回ここまで鶏の魅力を感じることができたのは、展示方法が秀逸だったということが大きいと思います。

美しい剥製が持っている「モノ」の力を最大限引き出すことを最優先に、余分な要素はいっさいそぎ落として、照明も抑え気味に。展示室内に入った人は誰しも、このシンとした空間の中でこれだけの数の鶏たちと対峙することにまず圧倒されて引き込まれたはずです。

展示台の足下には4カ所ほどディスプレイが設置されていて、博物館の遠藤秀紀教授が各品種を解説する映像が流されています。展示品と干渉しない位置関係なのですが、中身は目の前にずらりと並ぶ剥製のどれを説明しているのかが分かるようにしつつ一品種ごとに章立てされている。
これは意外に難しいことだと思うのです。これだけずらりと並んでいる剥製と、遠藤教授が説明している品種との対応が直感的に分からないと見る側にはとてもストレスだと思うのですが、そこが分かりやすく作られてありました。けっしてお金をたくさんつぎ込んだというような映像ではありませんでしたが、賢い人が見る側のことを考えて作ったことがよく分かりました。

遠藤教授のお話も面白かったです。あるものはその品種の文化的な位置づけを、あるものは現在の家禽としての鶏との遺伝的な関係を、あるものは形態的な特徴を、というように内容はさまざま。
昔「ゴー傑P」というラジオ番組に遠藤さんが出演なさっているのを聞いたことがありました。その博識ぶりに、ダーウィンとかけて番組内で「エンウィン」と呼ばれていましたが、改めて人を惹き付ける知識量と分かりやすさだと思いました。

学術的な内容なのですが、退屈な「お勉強」にせずに「もっと知りたい」と思わせる。といって、一時的な興味を惹き付けるだけのエンターテイメントではない。
主役である鶏たちの魅力を最大限に引き出して伝えることに成功している、すばらしい展示でした。

 

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